聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

不良債権1兆2,000億円?

森林整備法人の巨額負債問題、国に負担要請へ
巨額負債を抱える森林整備法人を所管する地元自治体とメーンバンクの農林漁業金融公庫は、負債返済策を共同で考える検討会の初会合を11日に開く。双方とも森林法人への金融支援は限界、という認識で一致しており、検討会は、国に新たな負担を求める形の返済策をまとめる見通しだ。
(略)
森林整備法人は戦後の木材需要の高まりを受けて設立。地権者から山を借り、造・育林を請け負ってきた。全国の40法人で計1兆2000億円超の負債がある。
農林公庫は04年度末で39法人に4433億円を貸し付けている。公庫への元利返済が滞った場合、地元自治体が損失を補償する契約となっているため、法人の負債は各自治体の大きな負担につながる。(asahi.com 2005年11月10日)

記事ではしれっと負債1兆2000億円と書いてありますが、要するに不良債権1兆2,000億円であると。で、ここに税金をつぎ込んで救済しようと、こういうことですか。

これからはエコロジー社会ですからね、森林は大事です。二酸化炭素の吸収にも一役買ってくれます。必要とあらば、税金の投入もあっていいかもしれません。でも、その前に経営実態の開示が先でしょう。話はそれからです。

というわけで、森林整備法人の財務情報を探してみたのですが、そもそもサイトを開設している森林整備法人が少ないようで実態がよく分かりません。Googleで検索して最初にたどり着いたのが、「社団法人 鹿児島県森林整備公社」。迷彩でも施しているのかというデザインのサイトですが、こちらの「収支計算書総括表」を見ると、すごいことになっています。

平成16年度の収入合計が約32億円、このうち本業と思しき事業収入が2億円弱。あとは借入金収入が22億円(!)、補助金収入が5.5億円、交付金収入が1億円弱。要するに本業の収入は全体の6%程度で、あとはほとんど借り入れや補助金交付金賄われているということです。

これに対して支出合計が同じく約32億円ですが、このうち借入金返済の元利金が21.5億円事業経費が5.5億円という構成になっています。

…完全に経営破綻してますな。

事業単体で収入の倍以上の経費がかかっているというのもアレですが、借入金も借りたカネを返すためにカネを借りるという破綻まっしぐらのパターンです。ちなみに、16年度末(17年3月末)借入金残高は272億円。…どうやって返済するつもりなんでしょう。

それでも鹿児島県森林整備公社は、こうしてネット上に情報を開示しているだけマシな部類です。上でも書いたとおり、ネット上に開示されている情報が少なすぎます。ほかの公社はどういう状況になっているのか、ちょっと想像もつきません。こういう状況で税金使って支援しますよと言われてもすぐには賛同しかねます。

朝日新聞(にかぎらず他のメディア)も、民間銀行の不良債権処理に税金を投入する場合はあれだけ大騒ぎしたのですから(当然ですが)、今回の件も「国に新たな負担を求める形の返済策をまとめる見通しだ」とかさらっと流してないで、もう少し突っ込んだ情報を提供して欲しいところです。