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お気楽金融雇われ人の見聞録

萩国際大学の破綻

山口県萩国際大学民事再生法の適用を申請して事実上破綻しました。

この萩国際大学山口県萩市が地域振興を名目に補助金を出して設立した公設民営方式による大学だそうですが、1999年に設立してわずか6年で破綻してしまいました。

設立当初からずっと定員割れの状態で、中国人留学生の受け入れで学生の補充を図ったり、日本唯一のゴルフ関係の学部を作ってみたりしたようですが、受け入れた留学生が失踪したり犯罪を犯したりするなどのトラブルが連発していたとのことで大学の経営に相当の問題があったことが伺えます。

ただ、仮に大学の経営がそれなりにしっかりしていたとしても学生がどんどん集まったかといえば、そんなことは無かったでしょう。22日付けの日経新聞の社説では、大学全入時代の到来と絡めて、文部科学省の舵取りがまずく、需給バランスを無視した大学の乱立が破綻の遠因になっているとの見方をしています。
特に地方では、地域振興という名目で自治体が土地や資金を出す「公設民営」方式の大学が次々と新設されてきた。需給バランスを無視した定員増は、高等教育全体の適正な規模と質に対する見通しを欠いた文部科学省のかじ取りの結果である。
背景に少子化問題大学全入時代到来という需給バランス悪化があるのは間違いないですし、文部科学省の舵取りもまずいのでしょう。が、なぜ地方自治体は需給バランスを無視してまで大学を作ろうとするんだろうか?というところに引っかかりを感じます。

全くの邪推かもしれませんが、公設民営方式で大学を設立する地方自治体は、大学と学生の需給バランスなど全く眼中に入れておらず、大学設立を公共事業と認識していると思います。

つまり市民ホールや美術館といった箱物建設や道路敷設が無駄な公共事業との批判を浴びた上、公共事業費自体の削減もあってやりにくくなったため、これに代わる公共事業の新しい一形態として公設民営方式による大学を乱発しているのでしょう。

県立大学や市立大学を作ろうとすれば、設立だけでなく日々の運営にも継続的に税金を投入する必要があります。一方、「公設民営」方式にすれば、設立時に補助金を出すだけで大学の運営責任は民間の運営主体が負うことになり継続的に税金を投入する必要はありません。しかも、大学設立のために大学の建物の建設や周辺環境の整備が必要ですから、地元の土建業にもカネが落ちる。いいネタが見つかったと考える自治体が出てきても不思議ではありません。

そう考えると、地元では設立前から大学の先行きを不安視する声が出ていたのに設立を強行した理由も理解できます。萩国際大学も設立ありきで、甘いとしか言いようのない入学者の見通しを基に設立され、その運営も杜撰の極みとなったんじゃないでしょうか。この手の学校がこれからいくつも出てくると思います。