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お気楽金融雇われ人の見聞録

中立性、公平性、高い倫理観を共有する一級の専門集団

東証、カネボウの上場廃止巡り本格調査
東京証券取引所は13日、カネボウ上場廃止とするかどうかの本格調査に入った。近く担当者から粉飾の経緯を聴取。月末の臨時株主総会後にカネボウが提出する訂正有価証券報告書も参考に結論を出す。産業再生機構は上場維持を要請しているが、東証は昨秋に西武鉄道を虚偽記載で上場廃止にしただけに、難しい判断を迫られる。(NIKKEI NET 2005年4月13日)
開いた口がふさがらないとはこのこと。粉飾を常態化していたカネボウの旧経営陣が責められるべきなのは当然だが、上場維持を要請する産業再生機構の厚顔振りにもあきれ返る。どう考えても上場廃止だろう。

産業再生機構のコメントは概略次の通り。(カネボウ株式会社による過年度決算の訂正発表について:PDF)
  • カネボウ再生計画は再生機構が実施したデューディリジェンス(資産の査定)に基づいて今回の決算訂正にかかる内容を織り込んでおり、支援の前提に影響を与えない
  • 今回の訂正は、適切な企業情報を開示することを目的として、カネボウが自発的に行ったもの
  • 現在のカネボウにおいては、過去に対する真摯な反省を踏まえ、適切な経営が行われる体制がとられていること
  • カネボウにおいては、事業再生計画の実現に向けて着実な努力が行われていること
え~と、粉飾決算していたことは資産査定で分かっていたけど、それを織り込んだ上で再生計画を立てました、粉飾は過去の経営陣がやったことで今のカネボウはちゃんと頑張っているんだから問題ない、だから上場維持も当然だということですか。
それはちょっと無理があるのでは?まるで説得力がない。

確かに東証の上場に関する規則には、産業再生機構による再生期間中の企業に関する上場廃止基準の緩和ルールはある。でも、それは複数年にわたって虚偽開示を行っていたようなコンプライアンス上問題ある企業を後付けで救済するためのルールじゃないだろう。そもそも粉飾決算していなければ、産業再生機構が支援を始める前に上場廃止になっていて然るべきなんだから。

産業再生機構は、今回の訂正発表でカネボウ上場廃止になってしまうと「正直者が馬鹿をみる」などと言っているようだけど、それは議論のすり替えで、馬鹿をみている正直者は「ちゃんとした」決算と情報開示を行ってきた他の上場企業と99.7%も減資させられたカネボウの株主だろうに。産業再生機構は、正直者に馬鹿を見せたコンプライアンス上問題ある企業を再生することに関して明確に説明することが必要だろう。

産業再生機構としては、「目的のために手段は正当化される」とでも言いたいのかもしれないが、であればそもそもデューデリやる必要もなかったし、減資して既存株主の責任を問う必要もない。徳政令を適用するとかして債務を棒引きにしてしまえばよかっただけのこと。再生のお膳立てには「市場のルール」を適用しておいて、上場廃止基準に抵触していることは見逃せと?都合の良いルールだけつまみ食いというのはどうかと思う。

まぁ、産業再生機構は「中立性、公平性、高い倫理観を共有する産業再生事業の一級の専門集団」ということなので、その名に恥じない対応を見せてくれることを期待しています。