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お気楽金融雇われ人の見聞録

EUの対中国武器禁輸措置解除へ

EUによる中国への武器輸出禁止措置が6月に解除されることが、半ば既成事実となった。
一九八九年の天安門事件を機に始まった中国への武器禁輸は、中国との貿易拡大に伴い、有名無実化が進んでいる。EUは六月にも解禁に踏み切る構えだ。
米国は、中台軍事バランスを崩す恐れがあるなどとして、反対してきた。ブッシュ大統領は、シラク仏大統領との会談でも解除反対を伝えた。
中国の軍事力強化は、東アジアの軍事バランスを崩すだけでなく、日本の安全をも脅かしかねない。
日本にとっても望ましいのは、米欧の協力で、世界の安定と繁栄が確保されていくことである。(YOMIURI ON-LINE)
読売新聞は社説で淡々とおまけのようにしか触れていない。EUが中国に武器を輸出すれば台湾海峡での緊張が高まることはほぼ自明で、日本に影響が出ないわけはないのだから、もっと騒いでもよさそうなものだが、この扱いの軽さはなぜだろう?「日本にとっても望ましいのは、米欧の協力で、世界の安定と繁栄が確保されていくことである。」などと他人事のように言っている場合ではないと思うのだが。
President Jacques Chirac of France said Tuesday that Europe remained steadfast in its desire to end the ban. He said that "we intend to lift the last obstacles in our relations" with China. But he also said the ban should be lifted "under conditions that Europe and the United States define together." (The New York Times
既にシラク大統領は売る気満々で、武器を売って中国との関係を強化し、アメリカを牽制するコマの一つにするつもりだ。中国がEUの思うとおりに動くとは思えないが、対アメリカという点では両者の利害は一致しており、既に水面下では中国からお買い物リストが出ているのだろう。Bussiness Weekによれば、お買い物リストにはDassault社のミラージュ戦闘機やEADS社の軍用ヘリコプターなどが挙がっているようだ。

中国向け輸出が解禁されれば中国は念願の武器の近代化を実現できるとともに、台湾海峡をはさんで同じミラージュ戦闘機がにらみ合うことになる。

中国は禁輸措置が解除されることを見越して、反国家分裂法の制定を進め、ご丁寧に日本にまで趣旨説明にいらっしゃるくらい余裕綽々である。日本がこの事態に対して何かできるかというと、効果のありそうな手段は何もなさそうだ。ロシアとの関係を良好に保っておくことくらいしか思いつかないのがいかにも歯がゆい。