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お気楽金融雇われ人の見聞録

選択と集中?

牛丼チェーン最大手の吉野家の売上がなかなか回復しない。

11月の既存店売上は、前年同月比34.6%減少しており、同じ牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーの11月の既存店売上が前年同月比4.0%増加したのとは対照的だ。
吉野家、11月の既存店売上高34.6%減・客数伸びず(NIKKEI NET)

吉野家といえば、店のメニューを牛丼中心に極端に絞ることで経営効率化を実現しデフレの申し子とまで言われていたわけだが、今となっては材料の牛肉の調達先をアメリカだけに依存していたことが完全に仇になってしまった。

BSE感染牛が見つかったことでアメリカ産牛肉の輸入がストップした頃、安部社長が盛んに輸入再開のロビー活動を展開しているのを見て、吉野家が原料牛肉を100%アメリカから輸入していたと知って唖然とした覚えがある。

確かに原料調達先を絞ることでバイイングパワーを利かせることで低コストでの調達を実現できたことが吉野家の強みだった。しかし吉野家ほどの大企業であれば、調達がストップした時のことも考えて調達先(国)を複数確保しておくべきだったのだろう(今となっては単なる後講釈だが)。


そして、似たような状況がゴーン社長の日産でも起こった。
日産、鋼材調達難で来年3月にも減産の可能性(NIKKEI NET)

こちらの方は、新車が売れすぎて鋼材調達が間に合わなくなったということだが、トヨタやホンダは当面の鋼材を確保できていることを考えれば、ゴーン社長も認めている通りあまり言い訳はできない。

少し前まで経営の教科書では「選択と集中」が持て囃されており、両社はその成功例とされていたわけだが、吉野家や日産のニュースは、両社のような大企業はリスク分散(「一つのかごにすべての卵を盛るな」)を優先すべきで、過度な「選択と集中」は却ってリスクを大きくするという、ある意味当たり前の命題の良い実証例を示してくれたと言える。