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広田元首相の遺族は合祀されたくなかったのか

福田さんは早々にレースから降りてしまいましたが、谷垣財務大臣自民党総裁選への出馬を表明し、いよいよ総裁選挙が本格化です。世論評価では安倍さんが圧倒的にリードしていますが、選挙するのは自民党の議員と党員なので、その辺りがどのくらい影響するんでしょう。勝ち馬に乗るのが政治家のセオリーとすれば、今回は安倍さん有利ということになるのかな。

そんな総裁選への影響を狙ったのどうか、昭和天皇靖国神社へのA級戦犯合祀に関して不快感を示していたとされるメモを日経新聞が「発掘」してきたのに続き、こんどは朝日新聞が広田元首相の遺族が靖国神社への合祀に合意した覚えは無いとのインタビューを掲載しました。

A級戦犯、広田元首相の遺族 「靖国合祀合意してない」
東京裁判A級戦犯として起訴、処刑された広田弘毅元首相が靖国神社に合祀(ごうし)されていることについて、孫の元会社役員、弘太郎氏(67)が朝日新聞の取材に応じ、「広田家として合祀に合意した覚えはないと考えている」と、元首相の靖国合祀に反対の立場であることを明らかにした。靖国神社は、遺族の合意を得ずに合祀をしている。処刑された東条英機元首相らA級戦犯の遺族の中で、異議を唱えた遺族は極めて異例だ。…
広田家の菩提(ぼだい)寺は故郷の福岡にあるが、遺族は元首相の遺髪を分けて鎌倉の寺に納め、参拝している。55年4月、旧厚生省は横浜で火葬されたA級戦犯7人の遺灰を各遺族に引き渡そうとしたが、広田家だけは受け取らなかった。弘太郎氏によると、戦犯遺族でつくる「白菊遺族会」にも参加しなかった。
弘太郎氏は「靖国神社に行くことはあるが、国のために亡くなった戦没者を思い手を合わせている。祖父は軍人でもなければ、戦没者でもない。靖国神社と広田家とは関係ないものと考えている」と話した。
靖国神社広報課は「広田弘毅命に限らず、当神社では御祭神合祀の際には、戦前戦後を通して、ご遺族に対して御連絡は致しますが、事前の合意はいただいておりません」としている。(asahi.com 2006年7月27日)

広田元首相が東京裁判A級戦犯とされ絞首刑にされてしまったことは、当時のドサクサに巻き込まれてしまった結果であるという感覚を私はなんとなく抱いているので、「祖父は軍人でもなければ、戦没者でもない。靖国神社と広田家とは関係ないものと考えている」と、ご遺族が元首相の靖国神社への合祀を拒否している感覚もなんとなく分かるような気がします。

靖国神社の「ご遺族に対して御連絡は致しますが、事前の合意はいただいておりません」という靖国神社が主張するコメントは、それはそれで靖国神社のスタンスに則ったものなんでしょうが、どうも開き直りに聞こえてしまう。「外国との戦争で日本の国を守るために、斃れた人達を祀ることになった神社」という靖国神社の存在意義を否定する気はさらさらありませんが、このあたりの原理主義臭さはどうにも馴染めません。一旦祭ったものの「祭られたくない」という遺族がいれば、それを分祀というかどうかはともかく、名簿から外してもいいんじゃないの?と思いますけれどね。