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お気楽金融雇われ人の見聞録

国交省が姉歯元建築士の聴聞結果開示を拒否

確かに「国会での真相究明より姉歯建築士の情報保護を優先した」形ですが問題と言えるかどうか?

「姉歯聴聞」国交省が開示拒否…「個人情報」理由に
マンションなどの耐震強度偽装事件を巡り、国会議員が国会質問のため、姉歯秀次・元1級建築士(48)を聴聞した記録の開示を求めたのに対し、国土交通省は「個人情報にあたる」などとして拒否した。
昨年4月に全面施行された行政機関個人情報保護法の規定が理由だが、情報公開法は生命や財産などの保護のため必要なら、個人情報も開示できるとしている。同省は、国会での真相究明より姉歯建築士の情報保護を優先した形で、論議を呼びそうだ。
開示を求めたのは、原口一博衆院議員(民主)。国会質問のため、1月下旬に請求したが、国交省は、〈1〉行政機関個人情報保護法8条は利用目的外での個人情報の利用・提供を禁じており、姉歯建築士もすべての公表を望んでいない〈2〉聴聞は原則非公開の手続き――などとして拒否した。(YOMIURI ON-LINE 2006年2月3日)

いわゆる国政調査権と個人情報保護(行政機関個人情報保護法)のルールとのフリクションということなんだと思いますが、今回は国交省の判断が妥当なんじゃないかなというのが第一印象です。

なぜそう思うかというと、一つには姉歯建築士自身が開示を望んでいないという点。構造計算結果の偽造自体は悪いことですが、だからと言って非公開を前提に行った聴聞内容が本人の同意もなく開示・公開されてしまうというのは、参考人招致や証人喚問の場では回答拒否が認められていることと比べると無理があるように思います。

非公開を前提に聴聞内容の閲覧だけするというのなら理解できなくもないですが、国会質問のための開示ということになると公開されることが半ば前提でしょうから(原口議員は野党議員だからなおさら)、聴聞内容をそっくりそのまま公開することは難しいのではないかと。

もう一つは、聴聞内容が「人の生命、健康、生活または財産を保護するため、公にすることが必要と認められる」「公益上特に必要がある」情報にはあたらないのではないかという点。今回、偽装物件をつかまされた人々に対する救済や強度偽装の再発防止のためには何らかの立法措置が必要なのは当然ですが、聴聞結果がその法案作成のために必要不可欠かというと疑問です。

であれば、そんな大した内容でもない聴聞結果は公開したって差し支えないんじゃないの?という話になります。私も聴聞結果そのものは公開されたところでそんなインパクトのある内容だとは思いませんが、「自分に関する情報を自分でコントロールできる」ことが個人情報保護のキモですから、刑事訴追すらされていない現時点では国交省の判断のほうに理があると思います。