聞いた、見た、読んだ。

お気楽金融雇われ人の見聞録

きかんしゃ やえもん

きかんしゃやえもん (岩波の子どもの本)

きかんしゃやえもん (岩波の子どもの本)

田舎のローカル線を走る古い小さな機関車やえもんの話です。

若い頃のやえもんは、たくさんの乗客を乗せて都会から都会へ走っていました。でも今は田舎の小さな駅で古い客車を引っ張る毎日です。やえもんは自分が年寄り扱いされるのが癪に障って仕方がありません。毎日怒りながら田舎の駅から都会の駅までやってきます。

都会の駅についたやえもんは、年取った自分の姿を恥ずかしく思う一方、新しい電気機関車に馬鹿にされたことに腹を立てます。怒ったやえもんは、煙と一緒に火の粉を撒き散らして田舎の駅へ向かうのですが、飛ばした火の粉が田んぼに引火して火事になってしまいます。村の人々の怒りを買ったやえもんは、とうとうお払い箱にされてしまいます。くず鉄にされるため運ばれるやえもんの前に現れたのは…。

「きかんしゃやえもん」は、鉄道好きなお子さんを持つお父さんであれば外せない一冊。薄い本のわりに朗読には思ったより時間がかかる本ではありますが、我が家の息子たちのお気に入りです。最近でこそ落ち着きましたが、一時期は毎日のように朗読をせがまれたものです。

私自身も好きな絵本の一つであることは間違いないのですが、やえもんが鉄道会社の人に「かわいそうだが おまえは もう やくにたたないのだよ」と言われる場面は、サラリーマンとしては朗読しながら結構身につまされる場面ではあります(やえもんの場合は、すんでのところでお払い箱を免れるわけですが)。

やえもんのモデルとなった機関車は、1872年(明治5年)に開通した日本最初の鉄道、新橋−横浜間を走った1号機関車だという話はあまりにも有名です。この1号機関車は、九州の島原鉄道を経て、1936年(昭和11年)から東京(秋葉原)の交通博物館に静態保存されており、今でも見ることができます。

ちなみに「きかんしゃやえもん」の作者は阿川佐和子さんのお父さんである阿川弘之さんで、「やえもん」という愛称も阿川さんが考えたそうです。交通博物館のサイトにあるやえもん物語(改訂版)には、1号機関車の話が詳しく書かれています。電車好きなお子さんを持つお父さんは必見のサイトです。