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お気楽金融雇われ人の見聞録

HPフィオリーナ会長の辞任

ヒューレット・パッカード(HP)のフィオリーナ会長が辞任した。フィオリーナ会長は、ルーセント・テクノロジーから引き抜かれてCEOに就任したことやコンパック買収の際のプロキシーファイトの記事を見るに付け、あぁ注目されているやり手の経営者なんだなぁとは思っていたので、事実上の解任されたということで正直びっくりした。

今回の解任劇は、表向き取締役会との経営戦略に関する行き違いがあったということのようだが、裏を返せばHPの取締役会が「異分子」であるフィオリーナ会長をようやく追い出すことに成功したということのようだ。

R30さんの「フィオリーナ会長辞任に思う、HPとソニーのたどる顛末」によれば、フィオリーナ会長は「就任当時はマーケティングの天才ではあったが業績悪化局面において何らビジョンを示せずに社員や世間からの突き上げを食らっているという経営者」と評価されているし、ぶまさんの「フィオリーナCEOが辞任、HP@さまようHPウェイ」では、フィオリーナ以前のHPが「HPウェイ」といわれる家族的雰囲気を持った経営を行うやや異色の企業だったのに対し、いまのHPは「普通の」アメリカ企業になってしまっており、フィオリーナ会長が辞任しても以前のような「連帯感」が戻ってこないかもしれないと予想されている。私はどちらの評価も正しいと思う。つまるところ、フィオリーナ会長個人は大変能力のある人間なのだろうが、HPという会社の中では上滑りしてしまい、「HPウェイ」が担っていたようなHPの求心力の役割を果たすことができなかったのだろう。

フィオリーナ氏という有能な人物をスカウトし、結果としてそれまで持っていた組織の求心力、連帯感を失ってしまったHPに対して、先日のトヨタの首脳人事は、豊田家への「大政奉還」の道筋が出来たなどと報道されているが、組織の求心力の温存という観点で対照的な「うまい」人事だと思う。

暫定的とはいえフィオリーナ氏の後任CEOを勤めるのがHP勤務36年のウェイマン氏であるというのは、悪あがきかもしれないがHPが組織の求心力を何とか取り戻そうとする表れなのだろう。


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